非破壊検査で社会のインフラを守る、東京理学検査株式会社様Bluetoothモジュール導入事例

こんにちは、ムセンコネクトの石母田です。
今回はBluetooth® LEモジュール『LINBLE-Z2』及び『Bluetooth認証代行サービス』をご採用いただいた東京理学検査株式会社様の導入事例インタビューをお届けしたいと思います。
Bluetooth機能を使用し新たに開発された、街頭や照明灯などの中身を非破壊で検査することができる画期的な検査装置『COLOPATスキャン』の製品化をご担当された東京理学検査株式会社技術開発部長の新島祥顕氏に、LINBLE-Z2導入までの経緯や本製品の開発秘話を伺いました。インタビュー内容については本製品の開発製造をご担当された、株式会社マックエイト様にもご協力を頂いております。
*写真右 東京理学検査株式会社技術開発部長 新島氏
東京理学検査株式会社とは?

東京理学検査は、1975年に創業し、今年で創業50周年を迎えました。現在提供しているサービスは、配管の劣化診断、コンクリート内部の調査、建造物の耐震判断、埋設物の調査、プラント構造物の診断、高中圧ガス管の溶接部検査、そして、検査装置の開発など多岐にわたっています。
LINBLE-Z2を搭載した非破壊検査装置『COLOPATスキャン』とは?

東京理学検査株式会社技術開発部長
--Bluetooth化を実現した貴社製品について教えてください。
新島氏:
近年、街頭や道路標識などの柱が老朽化によって倒壊する事故が全国で報告されており、安全確保は喫緊の課題となっています。従来までの検査方法は掘削による点検、コンクリートブレーカーを使用して錆びているところやへこんでいるところがないかを確認する検査方法が主流でしたが、費用が高額であることもあり、限られた予算内でインフラを維持しなければならない自治体には大きな負担となっていました。こういった社会的なニーズから我々の検査装置は生まれました。
--従来の点検方法と比べて、「COLOPATスキャン」はどのような点が画期的だと思われますか。
新島氏:
一番の特徴は、掘削が不要なことです。装置を柱に当てるだけで、磁気を利用して内部の腐食や劣化を検知することができます。これにより、今まで30分以上かかっていた点検作業が、わずか5分で完了するようになります。
また、点検費用も従来の半分程度に抑えることができるため、より多くのインフラ設備を効率的に検査することが可能になります。
--装置は非常にコンパクトですが、開発に当たって、小型化も意識されたのでしょうか。
新島氏:
そうですね。この装置は10㎝四方と小型で、現場での使いやすさも考慮されています。この検査装置が開発されるまでは、有線方式の装置が一般的でしたが、柱の周りを検査する際にケーブルが絡まって邪魔になってしまうんです。検査員の作業効率が下がってしまいますし、ケーブルの取り外しにも時間がかかります。そこで、無線化できないかと考え、Bluetoothを採用することとなりました。現場でのスムーズな作業を実現するためにも無線化は必然の選択でした。
Bluetoothの製品化に当たっては、株式会社マックエイト様にご協力いただきました。マックエイト様とは、これまでにも装置の試作、制作、ソフトウェア開発をともに行ってきまして、その高い技術力と経験を信頼しております。


LINBLE-Z2採用の経緯、使ってみた感想は?
--製品化を実現させるに当たって存在していた課題や、LINBLE検討前にあったお困りごとはありましたか。
新島氏:
先にも説明した通り、開発をスタートした2014年当時、製品とPCとの接続には有線システムを採用していましたが、現場での取り扱いに課題があり、無線化の検討を進めることになりました。その当時の小型Bluetoothモジュールは海外製のものが多く、日本法人が扱い、かつ国内の技適認証を取得している製品を探していたところ、LINBLEの前身であるZEALにたどり着きました。
注)ZEALシリーズはLINBLEシリーズの前身となったエイディシーテクノロジー社のBluetoothモジュール。LINBLE-Z1およびLINBLE-Z2と互換性あり。
その後、2019年にもともと使用していたZEALシリーズが製造中止になるとのことで、代替モジュールを探すことになりました。ZEALではSPPプロファイルを使うことで、PC側からは仮想シリアルポートとして使用していたので、当然SPPプロファイルを使うことができるタイプのものを探していました。また、代替となるモジュールに変更する場合、基板の改版が必須なことや、製品側のファームウェア開発を新たにやり直さなければならないという費用面での課題もありました。
--LINBLEをご検討頂いたキッカケや実際にLINBLEを評価してのご感想はいかがでしたか?
新島氏:
2019年当時、ZEALの製造中止のご連絡と共にLINBLEの紹介を頂きました。もともとZEALを使用していたので、比較的早くLINBLEを検討してみることにしました。
- LINBLEはBLE通信ですが、USBドングル(LINBLEドングル)とセットで採用すれば仮想シリアルポートで通信できること
- ZEALとピンコンパチであるために基板の改版も必要なくなったこと
- LINBLEのコマンドもZEALと互換性があるため、ファームウェアの開発も最小限に抑えることができること
この3点がLINBLE検討の決め手として非常に大きかったです。
実際にZEALからLINBLEに変更を行っても、既存のシステムが正常に動作し、BLE通信でも問題ないことが確認できました。懸念していた課題もクリアすることができ、正式にLINBLEを採用することを決めました。
ムセンコネクト様へ問い合わせをした際には、知識の豊富さと対応の速さにいつも助けられていましたので、カスタマーサポートは非常に素晴らしいと思います。
--Bluetooth認証ではムセンコネクトのBluetooth認証登録代行サービスもご利用いただきました。サービスをご利用いただいたご感想を教えてください。

新島氏:
製品の製作をお願いしていたマックエイト様から、最終製品として販売をするためにはBluetooth認証が必要になると教えて頂きました。その時は「認証が必要になるんだな」と認識はしたものの、何が何だか全く分からない状態でした。
英語でBluetooth SIGとやり取りをする必要があることも知り、さらにハードルが高く感じました。細かいニュアンスを伝えることも難しいですし、このままではどうしたらよいかわからないというのが正直な感想でしたね。
そんな折、マックエイト様よりムセンコネクトさんがBluetooth認証代行サービスも行われているとお聞きし、依頼させて頂くことにしました。何が何かもわからない状態からのスタートでしたが、一括でご対応頂き、無事にBluetooth認証を取得することができました。
もし、ムセンコネクトさんにお願いしていなかったら、ルール違反の状態で製品を使っていたかもしれません。
今回のBluetooth認証は、製品を世に出すために避けては通れないステップだったため、サポート頂き、本当に助かりました。
--その他、ムセンコネクトに期待していることがあれば教えてください。
新島氏:
今後もLINBLE-Z2の安定した供給を続けて頂きたいと思っています。弊社では非破壊検査サービスに加え、本製品をレンタルで供給する形も考えており、全国のインフラ設備の安全性を担保していきたいと考えています。その際、基板やモジュールが変わってしまうと、それに合わせて装置の設計も変更しなければならず、生産に大きな影響が出てしまいます。今後も、ムセンコネクトさんには安定供給の面で引き続きご協力いただきたいですね。
お客様のご要望に適した製品を提案し続けるために

--最後に貴社の事業、製品について今後の展望を教えてください。
新島氏:
弊社は検査会社として、社会インフラの調査に大きくかかわっています。今回開発した装置もそうですが、私たちの役割はインフラの健全性を守るためのツールを作り続けることだと考えています。
日々のメンテナンスを少しずつ行うことで、安全性を守ることができるという考え方を大切に、今後も独自の検査技術の開発を続けていきます。そして、様々なインフラ設備のニーズにこたえられるソリューションを提供することで、世の中の「安心・安全」を守っていきたいと考えています。
インタビューを終えて
東京理学検査様の採用事例は、LINBLE-Z2をご利用頂いているユーザー様としては初のインタビューとなり、私にとっても非常に印象深いものとなりました。特に、ご担当の新島様の丁寧なご説明と、その明るい笑顔とお人柄が心に残り、終始和やかな雰囲気でお話を伺いました。
今回ご紹介頂いた「COLOPATスキャン」は、日本の社会が直面する「インフラ老朽化」という大きな課題を解決するための非常に画期的な製品であると感じました。また、新島様のお話を通じて、「非破壊検査」という業界を初めて深く知ることができました。私たちが当たり前だと思っている安全な日常は、東京理学検査様のような企業が日々の検査業務を通じて、不断の努力があって守られ続けているということを改めて実感いたしました。その一端を弊社の製品やサービスでサポートさせて頂けたことを大変光栄に思います。
東京理学検査株式会社様の今後の益々のご発展を、心より応援しております。貴重なお話をありがとうございました。