Auracast™市場開拓への挑戦、ヒビノ株式会社様のBluetooth認証登録代行導入事例

こんにちは。ムセンコネクトの石母田です。
今回は弊社の『Bluetooth認証代行サービス』をご採用いただいたヒビノ株式会社様の導入事例インタビューをお届けします。
Bluetoothの新技術Auracast™(オーラキャスト)に対応した業務用音声送受信システムを開発された、ヒビノマーケティング Div. 事業推進部 部長 池垣 浩氏、ヒビノマーケティング Div. 技術部 部長 兼 新規事業推進室 室長の山田 宏氏、ヒビノマーケティング Div. 技術部 技術サービス2チーム 兼 新規事業推進室 江川 直樹氏に、製品化に至った経緯と、実際にムセンコネクトの『Bluetooth認証登録代行サービス』をご利用頂いた感想を伺いました。
*写真左からヒビノマーケティング Div. 事業推進部池垣 浩氏、ヒビノマーケティング Div. 技術部 兼 新規事業推進室 江川 直樹氏、山田 宏氏
ヒビノ株式会社とは?

ヒビノグループは「音と映像で、世界に感動をクリエイトする」をパーパスに掲げ、音響、映像、音楽、ライブの分野で、常に開拓者として先駆けと呼ぶにふさわしい足跡を残してきました。ヒビノグループが何より大切にしているのは、人間にしか創り出せない「アナログ」的な価値。デジタル分野の最先端技術やノウハウを「前提」として、その上に、デジタル的には処理できない微細な音質、色相などを識別し調整する「運用技術」や、経験と感覚に基づいた職人技を重ね合わせることが、お客様にとってオンリーワンの存在になるための唯一無二の道であると確信しています。
デジタライゼーションが加速する今、音響と映像、照明のプロフェッショナルが集まるヒビノグループのリソースは、さらに大きな価値を生み出し、そのステージは日本から世界へと大きく広がっています。ヒビノグループでは、さまざまなお客様のニーズに、総合的・包括的な解決策をご提案する「トータル・ソリューション」機能のいっそうの向上を目指して、グループの総合力強化に積極的に取り組んでいきます。
新市場を開拓する『業務用Auracast™音声送受信システム』とは?

ヒビノマーケティング Div. 技術部 兼 新規事業推進室
--今回開発された製品の概要と、製品化の背景についてお聞かせください。
山田氏:
長年ヒビノの音響機器販売では、海外製品を輸入販売するという事業形態が中心でしたが、我々が所属するヒビノマーケティング Div.には「ものづくりを通して、新しい周辺領域を自分たちでカバーしていく」というミッションがありました。
その新たなチャレンジとして我々が今回開発したのが、Bluetoothの新技術であるAuracast™(オーラキャスト)に対応した業務用音声送受信システムです。
実はこの製品開発のきっかけとなったのは、ムセンコネクトの水野さんからAuracast™を紹介して頂いたことでした。
Auracast™の「ブロードキャスト(一対多通信)ができる」という点に大きな可能性を感じ、「これはやりたい」と製品開発を決定しました。そこで、実際に中国でベースとなるデバイスをいくつか購入し、それらを発展させた形で業務用に対応したプロトタイプを作り、同時にお客様へのご提案も進めていきました。結果的にはキックオフから発売まで約10ヶ月と、スピード感を持って製品化を進めることができました。
--新規事業として、Auracast™対応製品のものづくりに挑戦された中で、特にご苦労された点や課題はありましたか?
山田氏:
製品をある程度の形にするまでのスピードは早かったのですが、そこから実際に商品化する、業務用として耐えうるものにするという過程で、様々な課題が出てきました。いま思い返せばそこからが本当の開発に近かったと感じています。
江川氏:
私は製品の技術的なところを担当していたのですが、Auracast™について全く知らない状態からのスタートでした。Bluetooth SIGの仕様書が全て英語なので、その長い資料を読み解くのが大変でした。そこでAIツールにBluetooth SIGの資料を読み込ませ、疑問点を日本語で質問してAIに答えてもらうことにしました。その方法でだいぶ時間短縮ができました。

ヒビノマーケティング Div. 技術部 兼 新規事業推進室
池垣氏:
本プロジェクトにおける私の役割は、どちらかと言えば展示会やイベントなどを実施する際のプロモーションの手伝いやマーケティングに関する部分でした。新規製品の認知拡大のための、社内外の関係各所との調整役としてプロジェクトの事務局を担いました。弊社としての音響のものづくりは久々でしたので(※注)、自分たちで作るというDNAが社内では薄れていることが大きな苦労でした。そんな私たちにとって、自分たちのブランドで新しい製品を売り出すことには大きな挑戦が伴います。この新たな挑戦を成功させるため、社内外の連携をスムーズに進めることが、私の重要なミッションでした。
※注:ヒビノ社が扱う音響製品は海外の輸入製品が多く、自社製品のものづくりは約10年ぶり。

ヒビノマーケティング Div. 事業推進部
--Auracast™という新しい技術を市場に浸透させる上での課題や展望について教えてください。

山田氏:
我々が今直面している最大の課題は、「まだ市場がないところに新たな市場を作っていかなければいけない」ということです。現段階では「我々さえ売れればいい」という考えではなく、まず市場自体を立ち上げる必要があります。その上で差別化していけば良いと考えています。
江川氏:
現在市販されているイヤホンの中には、公表されていないだけで実はAuracast™に対応している製品が意外と多く存在します。しかし、まだ市場ができてないため、メーカー側も売り方を模索中で、カタログなどには載せていないケースが多いようです。
一般のお客様からは、「ペアリングはどうやるの?」と聞かれ、「Auracast™はラジオと一緒なんですよ」と説明しても、なかなかピンと来られない方も多いです。今はまだ「Auracast™とは何か?」というところを説明するフェーズだと感じています。
ムセンコネクトとの出会い、信頼感が決め手に
--ムセンコネクトの『Bluetooth認証登録代行サービス』をご検討いただいた経緯や、正式にご依頼いただいた決め手について教えてください。
山田氏:
ムセンコネクトさんとは以前からお付き合いがあり、代行サービスの内容は存じ上げておりました。
Auracast™という新しい技術に取り組む中で、認証取得について調べているとBluetooth特有の難しい専門用語や解釈があり、「自分たちで認証を取得することは困難だろう」と考えました。
代行に関して複数の見積もりを取りましたが、ムセンコネクトを選択させていただいた最大の決め手は、水野さんという「人」への信頼感です。その上で、「この金額でこういうことができます」というメニューと金額が明確だった点も大きかったです。
--実際に認証代行サービスをご利用いただいて、特に良かった点やご感想があればお聞かせください。
山田氏:
難しいことを難しい言葉でお話しするのではなく、我々に分かるようなレベルでお話いただけたのがよかった点です。「何をすればいいか」「何の情報を取ればいいか」という指示が具体的で明確だったので、非常にやりやすかったと感じています。
池垣氏:
他社だったらなかなか認証が取れなかった可能性もあったのではないかと感じました。いろいろとアドバイスをいただけたので、すんなりといけたのかなという気がしています。
江川氏:
必要な事柄を割と端的に言っていただけるのが良かったです。慣れない用語が多い中で、必要十分な量を「これとこれがあればいけますよ」と示していただけたのが、やはりやりやすかった点です。
--ムセンコネクトのウェブサイトなどもご活用頂いているとのことですが、ご評価いただける点があればお聞かせください。
江川氏:
Bluetooth認証代行とは別ですが、ムセンコネクトさんの無線化講座は本当に助かりました。国内でBluetoothの知識を得られるウェブサイトは、個人ベースのものが多く、信用できるか判断が難しいのが現状です。
しかし、ムセンコネクトのブログやコラムは日本語で説明されている上に、SIGの資格(※注)をお持ちなので、情報が信用できるという安心感があります。「Coded PHYはどういうものか」といった情報を細かく説明しているサイトは他に見つからないため、何回も見て勉強させていただきました。
※注:ムセンコネクト水野が資格保有するBluetooth SIG公認『Bluetooth®認証コンサルタント(Bluetooth® Qualification Consultant)』のこと。
今後も、「(Bluetoothに関して)とりあえずこうしたらできるよ」といった、実用的な記事をウェブサイトで増やしていただけるとさらにありがたいです。
お客様のご要望に適した製品を提案し続けるために

--最後に貴社の事業、製品について今後の展望を教えてください。
山田氏:
私たちの製品は、「確実に動いて、シンプルで間違わずに使える」ということに注力して作られています。
今回開発した音声送受信システムを活用し、これまで音楽や会話が届けられなかったような人たち、例えば病院や介護施設、インバウンドの方々といった、音を聞き取りづらかった方々にも音を届けられる環境をどんどん増やしていきたいと考えています。その実現にはAuracast™が最適であると判断し、製品展開をしています。私たちの取り組みにムセンコネクトさんがご協力いただけたことをとても感謝しております。
江川氏:
たとえば電車の中にあるディスプレイのように、画面があっても音が聞こえない場所に、Auracast™が普及していくといいなと期待しています。Bluetoothの手軽なブロードキャストが、社会インフラとして広く使われるようになることを願っています。
インタビューを終えて
ヒビノ様の導入事例インタビューでは、新しい技術であるAuracast™という未知の市場へ、スピード感を持って挑む貴重なお話を伺えました。
私自身の話になりますが、学生時代に障害のある子どもたちの学び支援を行う研究会に所属していた経験があります。その体験から、音を拾うことに難しさを感じる方々にとっての音が持つ特別さや、そこから得る情報や感動がいかに大きいかを深く実感しております。
Auracast™は、こうした方々も含めた全ての人へ音を届ける、極めて社会的な意義を持つ技術です。「市場がないところを作っていく」というヒビノ様の新しい挑戦により、Auracast™がさらに多くの方々へ広まることを心より願うばかりです。私たちムセンコネクトも、微力ながらヒビノ様の取り組みを支え、Auracast™市場をともに盛り上げていけるように今後も尽力いたします。貴重なお話をありがとうございました。
