小型化のための無線化で新たな付加価値を発見、株式会社タツノ様のBluetoothモジュール導入事例
こんにちは、ムセンコネクトCEOの水野です。
今回はLINBLE-Z1をご採用いただいた株式会社タツノ様の導入事例インタビューをお届けしたいと思います。
Bluetooth機能を有する水素用コリオリ流量計『FM-1135』の製品化をご担当された株式会社タツノの円谷氏、大川氏、溝渕氏、関島氏、上野氏に、LINBLE-Z1導入までの経緯や本製品の開発秘話を伺いました。
*写真前列左から株式会社タツノの大川氏、上野氏、関島氏、後列左から溝渕氏、円谷氏
株式会社タツノとは?
株式会社タツノは、燃料油の流体計量計測を基幹技術として、サービスステーションや油槽所などの多彩な燃料供給用機器、サービスステーション販売用システム機器を製造販売しています。また、創業以来蓄積した豊富なノウハウを活かして危険物の貯蔵所や取扱施設の設計施工およびメンテナンス業務を行い、各方面より高い信頼を得ています。
次世代サービスステーション向け水素ガス用コリオリ流量計とは?
まず始めに大川氏と溝渕氏から無線化への背景を伺いました。
-- Bluetooth化を実現した貴社製品について教えてください。
溝渕氏:
弊社は1911年の創業から一環して主に計量機を主軸として開発しています。1919年に日本初のガソリン計量機の製作に成功後、ガソリンだけでなくすべての自動車燃料に取り組み、LPG(液化石油ガス)やCNG(圧縮天然ガス)、LNG(液化天然ガス)、水素の充填をおこなうディスペンサーも開発してきました。そんな中、次世代サービスステーション向け水素ガスディスペンサーへの組込み用機器として、2008年に開発されたのが水素ガス用コリオリ流量計でした。これは、充填する高圧水素ガスを正確に計測し、高精度かつ確実に水素エネルギーを提供するための計測機器です。
当時の水素ガス用コリオリ流量計は、センサーと変換器が分離したセパレート型の構造をしていました。その後約10年の月日が流れ、2017年に開発されたのが、現在の形であるセンサーと変換器が一体型となったBluetooth搭載の水素ガス用コリオリ流量計です。
大川氏:
実はこの時の開発課題はBluetooth化ではなく、『圧倒的な小型化』が開発チームの最優先課題になっていました。
当時は競合他社を見比べてもセパレート型モデルが一般的な形状であり、「従来のセパレート型モデルを圧倒的に小型化するためにはどうしたらよいか?何を捨てるか?」をポイントに社内で議論しました。そこで「コリオリ流量計を取り扱うユーザーがどのような場所でセッティングをするのか?操作頻度はどの程度か?」など、市場やユーザーの立場に立って顧客が必要とするものをつくろうと検討を重ねた結果、元々あった液晶の表示部と操作スイッチをなくし、かつ、回路基板や配線設計の抜本的な整理もして必要最低限のシンプルな機能だけを残すという選択をしました。
代わりにセンシングしたデータは無線化.comのBluetoothモジュール『ZEAL-C02※』を利用してタブレット等へ無線通信し、アプリ上で表示するようなインターフェースに変更しました。それによって小型化に成功し、全く新しいコンセプトの水素ガス用コリオリ流量計を開発することができました。つまり元々無線化が目的だったのではなく、「小型化のための手段が無線化」だったわけです。
2 in 1の一体型モデルを開発後、とある展示会に出展した際に「随分小さく作りましたね」と同業他社の方々からもお褒めの言葉をいただいたのが、いまも強く記憶に残っています。
※ZEAL-C02はLINBLE-Z1の前身となったエイディシーテクノロジー社のBluetoothモジュール。LINBLE-Z1と互換性あり。
LINBLE-Z1を搭載した水素ガス用コリオリ流量計『FM-1135』の開発ポイントとは?
次に関島氏と上野氏から新製品の開発ポイントについて伺いました。
-- LINBLE-Z1をご検討いただいたキッカケや開発段階でのポイントについて教えてください。
関島氏:
約5年ほど前にZEAL-C02が終息になったため、代替となるBluetoothモジュールの採用検討を開始しました。弊社製品は危険物を取り扱うため認証の取得が必要であり、変更には様々な制約があります。その中で互換性があって基板の設計変更が不要なLINBLE-Z1の採用を検討しました。試しに載せ替えてみてソフト面の検証を行った結果、ハードウェアフロー制御まわりで若干の修正はありましたが、載せ替えに伴う大きな障害はなく、すぐに問題なく動作することが分かりました。
上野氏:
LINBLE-Z1への切替で特に注力したのがアプリケーションです。ZEAL-C02ではAndroidタブレットで操作を行っていましたが、LINBLE-Z1はBLEなのでiOSとの通信が容易になりました。そのため、LINBLE-Z1の採用をキッカケに社内でも初となる『iOSでのアプリケーション開発』を行う良い機会になりました。
「いかに操作性を上げるか?」をテーマにアプリのユーザーインターフェース(UI)を組み上げていきました。アプリのユーザーである弊社のメンテナンスサービスマンや生産・開発部門の担当者が現場で直感的に操作できるようなUIを目指し、試行錯誤を繰り返しました。その成果として、今では現場での機器トラブル時にタブレットが活用されるようになりました。以前は流量計のエラーが発生したときにエラー結果から原因を推測するしかありませんでしたが、アプリであらゆるパラメータを無線取得してそこから解析ができるようになったので、結果、復旧に要する時間を大幅に短縮できるようになりました。
-- 無線化にあたって苦労や難しかった点はありましたか。
大川氏:
自動モードを使えば電源ONですぐにシリアル通信ができたので、開発時の苦労はほとんどありませんでした。金属筐体に組み込まれたときの通信距離は懸念していましたが、実際に組み込んだ状態で10メートルは飛んでいたので、わたしたちの使い方としては問題ありませんでした。
無線化で得られたメリット・付加価値
続いて円谷氏から無線化のメリットやムセンコネクトのBluetooth認証登録代行サービスについて伺いました。
--無線化してみて、小型化以外のメリットはありましたか。
円谷氏:
繰り返しとなりますが元々の課題は「装置の小型化」でした。無線化はそのための手段だったのではじめから無線機能に多くのことを期待していたわけではないのですが、無線化したことで結果的に得られたメリットや付加価値がいくつもあります。
たとえば無線化したことによってこれまで抱えていた認証上の問題をクリアすることができるようになったので、結果的に日本だけでなく出荷できる国や地域が増え、販路が広がったのはメリットのひとつです。具体的には北米でも販売できるようになったので単純に出荷台数が増えました。先ほどお話ししたタブレット端末を使った現場解析というのも実は北米に出荷できるようになったことで新たに発見できた付加価値でした。このように副産物的にあとから無線化のメリットを実感できたケースもあります。そのほかにも無線化によって設計の自由度が上がったり、装置を開けずにデータを無線取得できるようになったのは無線化の大きなメリットです。
--Bluetooth認証ではムセンコネクトのBluetooth認証登録代行サービスをご利用いただきました。サービスをご利用いただいた経緯やご感想を教えてください。
円谷氏:
そもそも「Bluetooth SIGに加盟しなければいけない」ということ自体、全く知らない状態で開発をスタートしました。SIGのメンバー登録や製品登録がわからなすぎて、開発よりもその辺の手続きが一番困りました。そこでムセンコネクトさんのBluetooth認証登録代行サービスにお願いすることにしました。
実際に利用してみての感想としては「早かった」「こんなにスピーディに進むのか」というのが第一印象でした。一部、弊社内部の経理処理の問題で時間が掛かってしまいましたが、ムセンコネクトさんには柔軟にご対応いただいたので困ることがありませんでした。また「どういった情報が今後必要なのか?」を的確に教えていただけたので事前に準備しておくことができましたし、ご提供してからはすぐに製品登録が完了していた印象です。
『確かな品質』と『テクノロジー統合』との両立を
-- 最後に貴社の事業、製品について今後の展望を教えてください。
溝渕氏:
弊社はこれまで、自動車等へのエネルギーインフラを担う企業として様々な認証を着実に取得し、確かな品質をお届けしてきました。一方で、Bluetoothも然りですが「新しいテクノロジーを取り入れ、どのようにタツノの製品に落とし込んでいくのか?」を両立していく必要があるとも考えています。今後も更なるサービスの充実やお客様のより良いパートナーとなれるよう努力を重ねていきたいと思います。
Bluetooth化のポイント
- 「装置の小型化」という課題に対して「無線化」というアプローチで圧倒的な小型化を実現。
- 無線化によって新たな付加価値を獲得。無線化検討時には気づいていなかった副産物的なメリットも。
- 物理スイッチや液晶パネルの代わりにタブレット端末を利用することで現場担当者の操作性・利便性が向上。
インタビューを終えて
タツノの皆様は、とにかく前向きな印象でした。
小型化を目指して開発された新製品が、偶然Bluetoothを採用したことで様々なメリットを生み出すきっかけになりました。今ではその時の成功体験に基づき、新たな技術を製品やテーマに融合できないか積極的に議論するようになったそうです。
『世界の社会を支えるインフラ企業』であるタツノの製品開発に、ムセンコネクトが関われることは非常に嬉しいことであり、大変ありがたいことだと実感しました。
ムセンコネクトでは今後もBluetoothモジュールや無線化サービスを通じて、メーカー様と一緒に産業を支えてまいります。