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IoT無線通信の新規格「WiFi HaLow(ワイファイヘイロー)」とは?

みなさん、はじめまして。丸紅情報システムズの鈴木と申します。メーカーエンジニアの無線化を支援するため、ムセンコネクトの無線化講座で解説記事を掲載させていただくことになりました。

今回は「次世代のWiFi」として注目されるIoT無線通信の新規格『WiFi HaLow(ワイファイ・ヘイロー:IEEE 802.11ah)』について解説します。

目次

丸紅情報システムズ株式会社について

丸紅情報システムズは、丸紅I-DIGIOグループの一員として、最先端ITを駆使した付加価値の高いソリューションやサービスを、お客様視点で提供するソリューションプロバイダです。製造・流通・サービス・小売・金融業を中心とするさまざまな業界の知見と高度な提案力とグローバルな視点からお客様の差別化に貢献する最先端技術やそれを活用した新しいソリューションの開発力が当社の強みです。ソリューションや製品、サービスを通じて、お客様の期待を超える新しい「価値」の創出でお客様のビジネスを支援します。

筆者プロフィール

パナソニックデバイスシステムテクノ株式会社にて半導体設計に従事したのち、2015年に丸紅情報システムズ株式会社へ入社。現在はIoT分野において不可欠なセンサーデバイスやIoTゲートウェイ製品の技術サポートを担当。現場での課題解決からシステム提案まで、幅広い技術支援を行っている。

WiFi HaLowとは何か?

「WiFi HaLow」とはWi-Fiの新しい規格であり、2022年から日本での使用が解禁となりました。

その最大の特長は、920MHz帯(いわゆる“サブギガヘルツ帯”)という、従来のWiFiよりも周波数が低く、それゆえに到達性に優れる電波を用いる点にあります。周波数が低い電波は、障害物を回り込み、透過する性質が強いという物理特性を持っています。これにより、WiFi HaLowは下記の通信性能を実現しました。

圧倒的な通信距離

見通しの良い場所では“最大1km超”に達し、従来のWiFiの10倍以上のエリアをカバーします。

障害物に強い

コンクリートの壁や金属の遮蔽物が多い工場、ビルが密集する都市部といった障害物の多い環境もラクラクと貫通し、安定した通信を届けます。

フォーマット・プロトコル変換いらず

既存のWiFi規格との技術的な親和性を保つ為、TCP/IP通信を使用します。その為、CSVファイルやMP4ファイルなど、一般的になじみのあるファイル形式をそのまま伝送する事が可能です。

なぜ今、WiFi HaLowなのか? 従来技術との決定的な違い

WiFi HaLowは、従来の無線技術が抱えていた課題を解決するために生まれた技術です。

vs 従来のWiFi (2.4GHz/5GHz)

  1. 「電波が届かない」「壁を越えられない」→ 1km超の長距離・高浸透力で解決。
  2. 「接続台数が足りない」→ 数千台規模の同時接続で解決。
  3. 「消費電力が高い」→ 年単位のバッテリー駆動で解決。

②と③についてはWi-Fi HaLow対応センサーデバイスを使用した場合に限ります。カメラ映像を伝送する場合は数台レベルでの運用が現実的な値です。

vs LPWA (LoRaWAN/Sigfox等)

  1. 「通信速度が遅く、データ量が小さい」→ 最大数Mbpsの速度を実現し、画像や動画、制御データの伝送も可能に。
  2. 「IPネットワークに直接つながらない」→ TCP/IPに完全準拠。既存のITインフラやクラウドとシームレスに連携。
  3. 「セキュリティや機能が限定的」→ WPA3という最新の強固な暗号化に対応し、FOTA(ファームウェアの無線アップデート)も容易。

WiFi HaLowは、LPWAの「広域性・省電力性」と、標準WiFiの「高速性・IP親和性・汎用性」を、一つの規格で見事に融合させたハイブリッドなソリューションともいえます。

現場を変える具体的な導入事例

【映像監視】丸紅情報システムズ株式会社の事例

Wi-Fi HaLow対応のゲートウェイ(Surfgate2HaLow)を活用し、様々な実証実験を実施しています。

例えば神奈川県久里浜の海岸沿いで、屋外環境下で見通しの良い時にカメラ映像の無線伝送テストを実施したところ、0~600メートルまではHD画質 / 10fpsでの無線伝送品質を維持し、1000メートルまではHD画質 / 1fpsで無線伝送を実現できました。

動画:見通しの良い屋外環境下で実施したカメラ映像の無線伝送テスト

さらに、屋内の工場内でも幅200メートル、奥行き125メートルの建屋内を1セットのWi-Fi HaLowゲートウェイでほぼ賄える事を確認しました。

日本における「920MHz帯」について

WiFi HaLowの躍進を理解する上で欠かせないのが、日本の電波法における「920MHz帯」の位置づけです。

この周波数帯は、IoT通信の“主戦場”とも言える「特定小電力無線局」に指定されています。これは、私たちの身近にある車のキーレスエントリーやガスメーターの自動検針などにも利用されており、以下の大きなメリットがあります。

免許不要

無線局の免許申請が不要で、誰でも自由に利用を開始できます。

低コスト運用

携帯電話回線のような月額の通信料(電波利用料)がかからず、運用コストを大幅に抑えられます。

2022年9月、総務省が無線設備規則を改正したことで、国際標準であるIEEE 802.11ah(WiFi HaLow)が、この利用しやすい920MHz帯のルールに準拠する形で、ついに日本国内での利用が可能になりました。 国内のルールでは、チャネル設計は1MHz/2MHz/4MHzといった帯域幅でチャンネルごとに細かく選択でき、ARIB(一般社団法人 電波産業会)が策定した技術基準「STD-T108」への適合が義務付けられています。

難しく聞こえるかもしれませんが、要点は「技術基準適合証明(技適)」を取得済みのモジュールや製品を選べば、ユーザーは複雑な法規制を意識することなく、免許不要で全国どこでも安心してIoT用のWiFi HaLowネットワークを展開できる環境が、ついに整ったということです。

法規制上の重要なポイントをまとめると、

  • 電波利用料不要
  • 1時間あたりの累積送信時間が360秒以内(10%デューティサイクル)
  • 送信前に他局がいないか確認するキャリアセンス義務
  • 技適取得が必須

となります。

「10%デューティサイクル」「キャリアセンス義務」とは?

10%デューティサイクルとは、「一定時間内で実際に電波を送信している時間の割合」のことです。

計算例:1時間(3,600秒)のうち、累積で360秒まで送信可能
→ 360秒 ÷ 3,600秒 = 10% = 10%デューティサイクルとなります。

つまりWi-Fi HaLowの場合、1時間(3600秒)の内、電波を送信できる時間はそのうちの10%である、360秒のみとなります。よってそのままフルで使用してしまうと、1時間の内、最初の6分間で全ての時間を使ってしまい、残りの54分間は電波を送信できなくなってしまうため、100ms時間分のデータをバッファして10ms間(10%)で送信するなど、制約を守りつつ時間を小分けにして回避しています。

なぜこの制限があるのか?

920MHz帯は「特定小電力無線局」として、無線局免許が不要で誰でも使える代わりに、電波の使用量に制限が設けられています。これにより下記を実現しています。

  • 多くの利用者が公平に電波を使える
  • 電波干渉を最小限に抑制
  • 他の無線システムとの共存を確保

キャリアセンスの基本概念

キャリアセンスとは、「送信前に同じ周波数で他の局が送信していないかを確認する仕組み」です。英語ではLBT(Listen Before Talk)と呼ばれます。

動作の流れ

1. データ送信要求発生
2. 周波数をモニタリング(通常1-10ms)
3. 他の信号を検出?
   ├─ Yes → 待機してから再チェック
   └─ No → 送信開始
送信完了後、再び待機状態へ

なぜ必要なのか?

電波の衝突防止が主目的です。

  • 複数の機器が同時送信すると電波が干渉
  • データが正しく伝わらない
  • 再送信により効率が悪化

身近な例でいうと、会議で発言する前に「他の人が話していないか」確認するのと同じ概念です。

通常、Wi-Fi HaLow対応モジュールにはこの機能が備わっているので、ユーザーは特に意識する事なく使用していますので、あまり気にする必要はありません。

WiFi HaLowの課題と解決策

ここまでWiFi HaLowについて解説してきましたが、もちろん、WiFi HaLowは万能の魔法ではありません。導入現場からは、新たに取り組むべき課題も見えてきています。

例えば、「送信時間率10%の制限をどうアプリケーション側で賢く管理するか」「同じ920MHz帯を使うLoRa/Sigfox等との混在環境における干渉対策」「数千台の端末IDやファームウェアをどう効率的に管理・更新(OTA)していくか」など、実装・運用フェーズで解決すべきポイントは少なくありません。

しかし、これらの課題に対しては、PoCから現場展開、そして運用最適化へと進むサイクルの中で、着実に実務ノウハウが蓄積されています。今後はベストプラクティスが共有され、さらに導入ハードルは下がっていくと確信しています。

丸紅情報システムズと商品・サービスの紹介

「自分の現場で今すぐHaLowを体験したい!」
「どんなネットワーク構築ができるのか、実機でデモ検証してみたい!」
――そんなニーズに応えてくれるのが、丸紅情報システムズが国内展開する「Surfgate2 HaLow」です。

Surfgate2 HaLowとは?

Surfgate2 HaLowは、WiFi HaLow(IEEE 802.11ah)に対応した国内随一のIoTマルチゲートウェイです。
同製品は従来のWiFi HaLow規格準拠に加え、Wi-Fi2.4G、Ehernet、Modbus、アナログI/O、EnOcean、BLE(オプション)インターフェースを搭載した多機能マルチインタフェースIoTゲートウェイです。

デモ・評価貸出のご案内

丸紅情報システムズでは、Surfgate2 HaLowの動作デモや、現場での評価機貸出サービスを積極展開中です。
「工場や圃場で本当に通信できるのかを事前に試したい」「自社のIoT端末と接続検証したい」「複数台APのネットワーク設計を評価したい」など、導入検討段階の現場ニーズに柔軟対応しています。

主な貸出・デモ内容

  • Surfgate2 HaLow本体/評価用子機のセット貸出
  • 設定サポート・現場接続サンプル・マニュアル一式
  • 実機を用いたリモートデモ・ハンズオン(Web会議対応)
  • 導入に関する技術相談・ネットワーク設計アドバイス

お問い合わせ・申込方法

最新の貸出状況やデモ申込、技術的なご相談は下記よりお気軽にどうぞ。 

まずは「現場PoCから始めたい」「自社用途に合うか聞いてみたい」という方も大歓迎!
エンジニア・IoT導入担当者の皆さまは、ぜひ一度Surfgate2 HaLowの実力を現場でご体感ください。

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