【体験メモ】FCC認証取得体験記、必要なものや手続きの流れなど

こんにちは。ムセンコネクト三浦です。
先日ムセンコネクトで初めて「自社製品のFCC認証」を取得しました。今回はその体験談をお話したいと思います。
FCC認証の体験記録をシェアします
FCC認証はアメリカ合衆国でBluetoothをはじめとした無線機器等を販売する際に必要な認証です。

これまでムセンコネクトでは自社製品のFCC認証を取得する機会がありませんでしたが、今回はLINBLEドングルをアメリカで利用したいというお客様からのご要望にお応えするため、自社でFCC認証を取得することにしました。
FCC認証には、Certification(証明)とSDoC(供給者適合宣言:Supplier’s Declaration of Conformity)の2種類が存在しますが、今回はSDoC(供給者適合宣言)による認証を取得しました。


せっかくの機会ですので、FCC認証取得(供給者適合宣言)に関する体験やメモを記録に残して、記事として公開することにしました。これからFCC取得を検討されている方には、取得の流れがイメージしやすくなるかと思いますので、ぜひ参考にしてください。
今回FCC認証を取得したLINBLEドングルは、特定のお客さま向けにハードウェアを変更したカスタマイズ版です。一般販売しているLINBLEドングルはFCC非対応となりますのでご注意ください。
FCC認証取得までのスケジュールと流れ
大まかに以下のような流れでFCC認証のプロセスを進めてきました。3ヶ月程度の期間がかかりました。
- 2025年6月中旬 認証機関に初めて相談する打ち合わせを実施
- 2025年6月下旬 依頼内容の確定。認証機関からの見積を受領
- 2025年7月上旬 認証機関へ発注・委託契約
- 2025年7月中旬 現地代理人とのコンタクト開始
- 2025年7月下旬 英語版のマニュアル作成
- 2025年8月上旬 EMC試験サンプルの準備。認証機関への送付
- 2025年8月中旬 認証機関でEMC試験実施
- 2025年8月下旬 EMC試験のドラフトレポートを入手
- 2025年9月上旬 EMC試験の正式レポートを入手
- 2025年9月中旬 現地代理人との契約完了
認証機関や現地代理人とのやりとりはこれで終了となりました。
この後、製品に貼り付けるラベル等の検討を行いました。
前提条件
今回のFCC取得にあたっての「前提条件」をお伝えしておきます。条件が変わるとFCC取得のプロセスや内容、期間等も変わる可能性があるためご注意ください。
LINBLEドングルの構成
今回FCC認証を取得したLINBLEドングルの構成は、USBドングル状のケースの内部にLINBLE-Z2とUSBアダプタを組み込んでいます。
そして、LINBLE-Z2は加賀FEIの「ED2833AA2」をコアモジュールとして利用しています。

加賀FEI製の「ED2833AA2」
「ED2833AA2」はFCCのモジュール認証を取得しています。このため、最終製品であるLINBLEドングルはFCC認証試験の一部を省略することができ、認証の取得を比較的容易に行うことができます。

間違いやすいところなのであえて逆の言い方もしておくと、「ED2833AA2」がFCCのモジュール認証を取得していたとしても、それを組み込んだ最終製品がそのままアメリカで流通できるというわけではありません。最終製品としてFCC認証の手続きが必要です。ムセンコネクトでもよくお問い合わせいただくご質問ですのでご注意ください。
FCC認証のために必要なこと
前述の通り、LINBLEドングルはコアモジュールの「ED2833AA2」がFCCのモジュール認証を取得済みでしたので、手続きを大幅に簡素化することが出来ました。
最終製品として対応する必要があったのは以下の4つです。
- EMC試験
- 現地代理人の指定
- ラベルの付与
- 英語版マニュアルの作成
順を追って補足していきます。
1. EMC試験(EMI試験)
EMC試験(EMI試験)とは、電子機器から発生する電磁波が規格内に収まっているかを確認する試験です。FCC認証では、最終製品の電子回路から発生する意図しない電磁波(不要輻射)が他の電子機器に干渉して誤動作を起こさないように、FCC Part 15 Subpart Bという規則への適合を示す必要があります。
今回は認証機関にてEMC試験を行ってもらいました。
EMC試験の状況
認証機関での試験は、電波的にクリアな環境で試験を行うため「電波暗室」と呼ばれる特殊な部屋の中で行います。
「電波暗室」では、部屋の壁面に電波吸収材が貼られていて、外部からの余計な電波を遮断したり、逆に内部から外部に電波が漏れないようにする工夫がされています。


試験に際して、測定対象の機器は「電磁ノイズを最も放射する状態」にする必要があります。
これは製品が通常の使用で起こりうる最悪のケースを想定して、その状態でも規格の限度値をクリアできていることを確認するためです。
市場で使用される機器構成を再現して、最も負荷が高くなるような動作状態を作って試験に臨みます。

とはいえ、電磁ノイズは簡単には確認できないので、どの動作状態にすると「電磁ノイズを最も放射する」のか判断しづらいものです。
また、当日の試験の際にトラブルが起きないように、必要な試験機材や機器の操作手順書などもしっかりと準備しておく必要があります。
認証機関とよく相談して、このような点を事前に確認しておくことをおすすめします。
テストレポートの完成
こうしてLINBLEドングルのEMC試験が完了し、テストレポートが完成しました。

2. 現地代理人の指定
FCC認証を取得する際にはアメリカ現地代理人を指定する必要があります。
この要件の目的は、アメリカ国内での法的な責任の所在の明確化と、FCCからの連絡窓口の確保の意味合いが大きく、実際にアメリカで流通する際の販売責任者とは別で構いません。
弊社ではアメリカに販売拠点があるわけではありませんので、現地の代理人と契約しFCCの連絡窓口をお願いしました。
3. ラベルの付与
最終製品には、組み込まれているモジュールのFCC IDを表示する必要があります。
製品の外装にラベルを貼って以下のように記載します。
Contains FCC ID : 2A6NFED2833
「2A6NFED2833」はコアモジュール「ED2833AA2」のFCC認証番号です。
このラベルにより、FCC認証済みの「ED2833AA2」を含んだ製品であることを明示します。
4. 英語版マニュアルの作成
最終製品の英語版の取扱説明書が必要になります。また、取扱説明書にはFCC規則に準拠していることを示すための文言を記載する必要があります。
LINBLEドングルのマニュアルに以下のように記載しました。

ムセンコネクトではFCC認証取得のサポートも承っております
FCC認証を取得するためには技術資料を用意したり、試験用のサンプルやテストプログラムの準備も必要です。ある程度無線に関する専門知識が必要となるため、日頃無線技術に携わっていないエンジニアの方には少々ハードルが高いかもしれません。
ムセンコネクトではFCC認証の取得支援も承っております。
必要な技術資料をレクチャーしたり、試験用サンプルの改造をお手伝いした実績もございます。
本記事をご覧いただいて、「自社でFCC認証を取得するのは難しいかも?」と感じられた方は、お気軽にムセンコネクトまでご相談ください。
