ゼロからわかる環境発電入門(6)太陽光発電・室内光発電

こんにちは。ムセンコネクト三浦です。
環境発電(エネルギーハーベスト)は、身の回りにある微小なエネルギー(光、熱、振動など)を「収穫」し、電力に変換して利用する技術のことです。
本連載では、この「環境発電・エネルギーハーベスト」を複数回に分けて基礎からわかりやすくご紹介していきます。
第6回は、環境発電の中でも最も身近で一般的な「太陽光発電・室内光発電」に焦点を当てて解説します。
太陽光発電はどうやって電気を作っている?
太陽光発電素子は、光のエネルギーを直接電気エネルギーに変換するデバイスです。これを「光起電力(ひかりきでんりょく、こうきでんりょく)効果」と呼びます。
簡単に仕組みを説明すると、以下のようになります。

太陽光発電素子(ソーラーパネル)は、この原理を応用した光電変換素子で、屋外の太陽光だけでなく、室内の蛍光灯やLED照明のわずかな光でも発電が可能です。
- 【太陽光発電素子のメリット】
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どこでも光があれば発電可能です。普及が進んでいて発電素子が安価に手に入ることが魅力です。
動く部品が一切ない「静的な発電」なので、小型化しやすく、メンテナンス性に優れています。 - 【太陽光発電素子のデメリット】
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光の量・強さに発電量が左右されます。夜間や光が届かない場所では発電できません。
太陽光発電素子の種類
IoTデバイスへの利用が考えられる代表的な太陽光発電素子を4つご紹介します。
① 信頼と実績の「シリコン系」
最も一般的で、歴史が長いのがシリコン系です。
屋外の大型パネルで使われる「結晶シリコン」は、直射日光下で非常に高い効率を発揮し、20年以上の長寿命を誇ります。
一方で、電卓などでおなじみの「アモルファスシリコン」は、結晶系に比べて屋外での効率は落ちますが、蛍光灯などの室内光でも安定して発電できるのが特徴です。
安価で入手しやすいため、コスト重視の屋内用センサーでもよく利用されています。
② 微弱光に強い「色素増感太陽電池(DSSC)」
最大の特徴は、「暗い場所でもしっかり発電できる」という点にあります。
北向きの部屋や、オフィスの隅といった、100ルクス程度の微弱な光でも電圧が立ち上がりやすいため、設置場所を限定したくない屋内用ビーコンなどに利用できます。
また、カラフルな見た目や半透明にできるといった意匠性の高さも魅力です。
③ 軽くて薄い「有機薄膜太陽電池(OPV)」
プラスチックのような有機化合物を「印刷」して作るのがOPVです。
フィルム状で非常に軽く、曲げられるという特徴があります。
特定の波長に対する感度を調整しやすいため、LED照明の波長に合わせて発電効率を最大化させた製品も登場しています。
④ 次世代の本命「ペロブスカイト太陽電池」
現在、世界中で最も注目されているのが、日本発の技術である「ペロブスカイト」です。
これまでの「シリコン系(高効率だが重い)」と「有機系(軽くて薄いが効率は控えめ)」の良いとこ取りをしたような存在で、薄くて軽いのに、シリコン並みの高い効率を誇ります。
ペロブスカイトは研究段階を過ぎ、耐久性試験や初期の社会実装が始まっています。
太陽光発電素子の性能チェック
セル変換効率とモジュール変換効率
「変換効率」とは太陽光発電素子が光を受けて発電する最大の電力量を示したものです。
1,000W / m2の放射照度下で電気エネルギーに変換される割合を算出します。
- セル変換効率
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最小単位である「セル」単体の発電効率を示します。あくまで発電素子の「素材状態」の発電効率です。
- モジュール変換効率
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セルを並べてパネル化した太陽光発電素子の「製品状態」での発電効率です。発電に寄与しない部分も含めるため、セル変換効率よりも一段低い数値になるのが一般的です。

各種スペック
太陽光発電パネルのデータシートを読み解くための主要な項目を紹介します。
- Voc(開放電圧)
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太陽光発電パネルに何も接続していない時の最大電圧です。電源回路の耐圧設計に必須です。単位はV(ボルト)です。
- Isc(短絡電流)
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太陽光発電パネルの出力端子をショートさせた時に流れる最大電流です。太陽光発電パネルが生成できる最大の電流量を示します。単位はA(アンペア)です。
- Vmp(最大出力動作電圧)
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太陽光発電パネルに負荷をかけたときに、太陽光発電パネルが最も効率良く動作しているときの電圧値です。単位はV(ボルト)です。
- Imp(最大出力動作電流)
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太陽光発電パネルに負荷をかけたときに、太陽光発電パネルが最も効率良く動作しているときの電流値です。単位はA(アンペア)です。
- Pmax(最大出力電力)
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太陽光発電パネルが最も効率良く動作しているときの出力電力です(Vmp × Impが最大化するときの出力電力)。単位はW(ワット)です。

特に室内光での発電の場合、光源(LEDか蛍光灯か)や照度(ルクス)によってこれらの値が大きく変化します。
設計時は、実環境に近い照度環境条件でのデータをメーカーに確認すると良いでしょう。
「太陽電池」と呼ばれる理由
一般的に太陽光発電パネルは「太陽電池」と呼ばれることがあります。
この「太陽電池」という言葉に違和感を覚えたことはありませんか?
名前に「電池」と付いていますが、ご存知の通り太陽電池(太陽光発電パネル)自体に電気を貯める能力はありません。太陽光発電パネルの電力を環境発電で利用する場合、蓄電デバイス(二次電池やコンデンサ)とセットで考える必要があります。
なぜ「太陽電池」と呼ばれるようになったのでしょう?
これは英語の “Solar Cell(ソーラー・セル)” の訳に由来します。
物理の世界では、電圧を生む最小単位を「Cell(セル/単電池)」と呼びます。
1950年代に太陽光発電素子が登場した際、乾電池のような静止した物体から電気が出てくる様子が「化学電池」と似ていたため、「太陽光で動くセル = 太陽電池」と訳され、そのまま定着してしまったのです。
エネルギーハーベストの文脈で誤解のない表現にする為には、「太陽光発電素子」、「太陽光発電パネル(ソーラーパネル)」、「太陽光発電モジュール(ソーラーモジュール)」などのキーワードを使うのが良いと思います。
太陽光発電・室内光発電はエネルギーハーベストの中でも最も実績があり、かつ進化の激しい分野です。
利用環境に合わせて最適な発電素子を選ぶようにしましょう。
次回も、環境発電・エネルギーハーベスト技術のポイントを紹介していきます。



