ゼロからわかる環境発電入門(7)熱発電(熱電発電)

こんにちは。ムセンコネクト三浦です。
環境発電(エネルギーハーベスト)は、身の回りにある微小なエネルギー(光、熱、振動など)を「収穫」し、電力に変換して利用する技術のことです。本連載では、この「環境発電・エネルギーハーベスト」を複数回に分けて基礎からわかりやすくご紹介していきます。
第7回は、温度差を利用して発電する「熱発電(熱電発電)」について、その仕組みやメリット、具体的な活用シーンを解説します。
熱発電(熱電発電)とは?
熱発電(熱電発電)とは、文字通り「熱」を「電気」に変換する発電方式のことです。
身近な例でいうと、工場の配管、自動車のエンジン、さらには私たちの「体温」も熱エネルギーを持っています。
しかし、これらの多くはそのまま大気中に放出され、活用されることなく「捨てられて」います。
この未利用の熱を拾い上げ、IoTデバイスの電源として再利用しようというのが、熱電エネルギーハーベスティングの狙いです。
熱発電(熱電発電)の仕組み:ゼーベック効果
熱発電(熱電発電)の根本にあるのが「ゼーベック効果」と呼ばれる現象です。
物質(金属や半導体)に温度差をつけると、高温側の電子はエネルギーを得て活発に動き回ります。
一方で、低温側の電子は動きが穏やかです。
すると、活発な高温側の電子が空いている(密度の低い)低温側へと移動しようとします。

電子はマイナスの電気を持っているため、電子が低温側に集まることで、物質内に「マイナスが濃い場所(低温側)」と「マイナスが薄い=プラスが濃い場所(高温側)」という偏りが生まれます。この電気的な偏りが熱起電力です。

単一の材料だけでは電力を取り出しにくいため、実際には「n型半導体」(マイナスの電子が動く)と「p型半導体」(プラスの正孔が動く)の2種類を組み合わせて、効率よく電気が流れる回路を作ります。

熱発電(熱電発電)の発電モジュールはこれを直列につなげる工夫をしています。
このような構造にすることで発電できる電圧が上がり、電気回路側で利用しやすくなります。

このような熱発電(熱電発電)に使う発電素子を「熱電変換素子(TEG:Thermoelectric Generator)」と呼びます。
真夏に使うハンディファンの冷却プレートには「ペルチェ素子」という部品が使われています。
「ペルチェ素子」は、ゼーベック効果の裏返しの原理(電気を流すと温度差が生まれる)を利用して冷却を行っています。
ペルチェ素子の構造は熱発電(熱電発電)に使う素子とほぼ同じです。そのため「ペルチェ素子を使って発電する」という言い方も間違いではありません。

熱発電(熱電発電)のメリット・デメリット
デバイス開発の視点から見た、熱発電(熱電発電)の利点と課題を整理しましょう。
- メリット
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- 24時間稼働が可能: 太陽光と違い、温度差さえあれば夜間でも発電し続けることができます。
- 長寿命・メンテナンスフリー: 可動部がないため、摩耗による故障がほとんどありません。
- 静音性: 発電時に音や振動が発生しません。
- デメリット
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- 変換効率が低い: 光発電に比べると、エネルギーの変換効率は低めです。
- 「温度差」の維持が難しい: 発電し続けるには、常に「熱い面」と「冷たい面」の差を作っておく必要があります。全体が温まってしまうと発電が止まるため、放熱板(ヒートシンク)などの設計の工夫が必要です。
- 電子回路の保護:電子回路基板が過酷な温度条件にさらされないように保護が必要になることがあります。
どのようなシーンで利用・期待されているか?
熱発電は、特に「電源が引けないけれど、熱がある場所」で利用されます。
例えば以下のようなユースケースが考えられます。
工場の設備監視
工場のスチーム配管や高温になるモーターに熱電変換素子を設置し、その表面温度と外気の温度差で発電し、振動や温度センサーを動かします。
配線工事が不要になり、広大な工場の点検や故障予知を自動化できます。
ウェアラブルデバイス
人間の体温(36℃前後)と外気温の差を利用して発電します。
低消費電力な液晶やセンサーであれば、充電不要で動き続ける「メンテナンスフリー」なウェアラブル端末が実現できます。
暖房器具や調理器具のついでに発電
キャンプ用のストーブやガスコンロの熱を利用します。
高温になる暖房器具や調理器具の側面に熱電変換素子を設置し、スマホを充電したり、暗いキャンプ場でLEDライトを点灯させたりする製品が既に実用化されています。
まとめ
熱発電(熱電発電)は、「捨てられていた熱」を「価値あるエネルギー」に変えるための鍵となる技術です。
放熱設計といった特有の難しさはありますが、熱源(配管の熱や地熱など)が一定であれば、天候や時間帯に左右されず、安定した発電が期待できます。
「自社の設備から出る熱を使って、ワイヤレス化できないか?」 そんなアイデアがあれば、ぜひ検討してみてください。
次回も、環境発電・エネルギーハーベスト技術のポイントを紹介していきます。



