ゼロからわかる環境発電入門(2)発電エネルギーの種類

こんにちは。ムセンコネクト三浦です。
環境発電(エネルギーハーベスト)は、身の回りにある微小なエネルギー(光、熱、振動など)を「収穫」し、電力に変換して利用する技術のことです。
本連載では、この「環境発電・エネルギーハーベスト」を、複数回に分けて基礎からわかりやすくご紹介していきます。
第2回となる今回は、環境発電(エネルギーハーベスト)が、具体的にどのような種類のエネルギーから電力を生み出しているのかを深掘りしていきます。

発電エネルギーの種類
環境発電・エネルギーハーベストの代表的なエネルギー源は以下のとおりです。
- 太陽光・室内光エネルギー
- 熱エネルギー(温度差)
- 力学的エネルギー(振動・圧力・回転)
- 電波エネルギー
- その他のエネルギー
順を追って一つずつ解説していきます。
太陽光・室内光エネルギー:光を電気に変える身近な技術
最も身近でイメージしやすい環境発電の一つが、光(太陽光や室内光)を利用したものです。これは光のエネルギーを直接電気に変換する技術で、いわゆる「太陽電池」がその代表例です。
- 【仕組み(代表例)】
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光が特定の半導体材料に当たると、そのエネルギーによって電子が飛び出し、電流が発生します。これを光起電力効果(こうきでんりょくこうか/ひかりきでんりょくこうか)と呼びます。
太陽電池(ソーラーセル)は、この原理を応用した光電変換素子で、屋外の太陽光だけでなく、室内の蛍光灯やLED照明のわずかな光でも発電が可能です。
- 【メリット・魅力】
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どこでも光があれば発電可能です。普及が進んでいて発電素子が安価に手に入ることが魅力です。
- 【デメリット・課題】
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光の量に発電量が左右されます。夜間や光が届かない場所では発電できません。
熱エネルギー:温度差から生まれる電力
私たちの身の回りには、常に「温度差」が存在しています。工場で熱くなった機械、排気ガス、人間の体温と外気の差など、この温度差から電力を生み出すのが熱エネルギーハーベストです。
- 【仕組み(代表例)】
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異なる種類の金属や半導体を接続し、その両端に温度差を与えると電圧が発生する現象をゼーベック効果と呼びます。この効果を利用するのが熱電変換素子で、特に工場などの排熱利用において注目されています。人の体温と外気の温度差を利用して発電するウェアラブルデバイスなども研究が進んでいます。
- 【メリット・魅力】
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常に温度差がある場所であれば安定した発電が可能です。未利用の排熱を有効活用できる可能性があります。
- 【デメリット・課題】
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発電効率がまだ低く、大きな温度差がないと十分な電力を得にくい状況です
力学的エネルギー:動きを電力に変える
歩く、振動する、風が吹く、といった「物理的な動き」を電力に変えるのが、力学的エネルギーハーベストです。
- 【仕組み(代表例)】
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圧電効果:特定の素材(圧電素子)に圧力を加えたり変形させたりすると、電圧が発生する現象を利用します。足元発電床や、機械の振動を利用したセンサーへの給電で使われます。
電磁誘導:磁石とコイルが相対的に動くことで電流が発生する原理です。
- 【メリット・魅力】
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日常生活や産業活動のあらゆる「動き」をエネルギー源にすることができます。
- 【デメリット・課題】
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発電量が動きの大きさに依存して変動しやすい為、効率的な発電を行うために機械的な工夫が必要になる場合があります。
電波エネルギー:空間を飛び交う電波をキャッチ
「見えない電力」とも言えるのが、電波エネルギーハーベストです。Wi-Fiルーター、携帯電話基地局、放送電波など、私たちの周りを飛び交う電波から微弱な電力を収穫します。
- 【仕組み(代表例)】
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レクテナ(整流アンテナ)と呼ばれる特殊なアンテナで電波を受信し、整流回路によって交流電流を直流電流に変換することで、電子機器を動かす電力として利用します。
- 【メリット・魅力】
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常に存在する電波を利用できるため、理論上は半永久的に発電可能です。
- 【デメリット・課題】
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現状では発電量が非常に少なく、超低消費電力デバイス向けになっています。電波の発信元からの距離が離れると収集できる電力が弱くなります。
その他のエネルギー
その他にも、静電気を利用した発電方式や、土壌に生息する微生物を使って発電する方式などが研究開発されています。
環境発電には様々な種類があり、それぞれ異なる特性を持っています。
利用する環境と実現したいこと、それぞれの発電素子の特性を見比べながら、最適な発電素子を選択することが重要です。
次回も、環境発電・エネルギーハーベスト技術のポイントを紹介していきます。



