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ゼロからわかる環境発電入門(9)電波発電(電波エネルギー)

ゼロからわかる環境発電

こんにちは。ムセンコネクト三浦です。

環境発電(エネルギーハーベスト)は、身の回りにある微小なエネルギー(光、熱、振動など)を「収穫」し、電力に変換して利用する技術のことです。本連載では、この「環境発電・エネルギーハーベスト」を複数回に分けて基礎からわかりやすくご紹介していきます。

「エナジーハーベスト」、「エネルギーハーベスティング」、「エナジーハーベスティング」とも呼ばれます。

今回は空間を飛び交う「電波」をエネルギー源にする「電波発電(電波エネルギー)」について解説します。

目次

電波発電(電波エネルギー)とは?

私たちの身の回りには、Wi-Fiの電波、携帯電話の電波、テレビやラジオの放送波など、目に見えない「電波」が常に存在しています。

これらの電波は、本来はデータを届けるためのものですが、微弱なエネルギーそのものでもあります。
空間に存在する未利用の電波をアンテナで捕まえ、電力として再利用するのが電波発電です。

電波発電の仕組み:レクテナ

電波発電を支えるのが、「レクテナ(Rectenna)」というデバイスです。
これは「アンテナ(Antenna)」と、交流を直流に変える「整流器(Rectifier)」を組み合わせたものです。

  • アンテナ: 空間を伝わってきた電波(高周波の交流信号)を受信します。
  • 整流回路: 受信した交流信号を、電子機器が利用できる「直流」の電力に変換します。

電波発電のメリット・デメリット

デバイス設計の観点から、その特徴を見ていきましょう。

メリット
  • 既存インフラの活用: 既に世の中にある放送波などを利用するため、エネルギー供給源を新たに作る必要がありません。
  • 24時間365日の発電が可能: 太陽光(光)のように時間帯に左右されず、電波がある限り常に発電し続けられます。
デメリット・気をつけるポイント
  • 得られる電力が極めて小さい: 他の環境発電(太陽光など)と比べても発電量は非常に微弱で、ナノワット〜マイクロワット単位の「超」低消費電力な設計が求められます。
  • 距離の影響を強く受ける: 電波の発信元(基地局等)から離れると急激に電力が減衰するため、設置場所が限定される場合があります。
  • 電波の量が一定ではない: Wi-Fiの電波などは周囲のデバイスの通信状況によって電波の量が大きく変わります。大きなファイルをダウンロードしている時は飛び交う電波の量が多いですが、ただアクセスポイントにつなげているだけの時は電波の量が少なくなります。

距離が離れるとエネルギーはどう変わる?

電波発電において最も高いハードルとなるのが、「距離によるエネルギーの減衰」です。

電波の強さは、送信元からの「距離の2乗」に反比例して弱くなります。
具体的にどのくらい減るのか数値で見てみましょう。

距離と電力の関係(理論値の例)

仮に、送信元から10cmの地点で得られる電力を「100」とした場合、距離が離れると電力は次のように激減します。

送信元からの距離得られる電力(比率)減衰のイメージ
0.1m (10cm)100%基準(至近距離)
0.2m (20cm)25%10cm離れるだけで4分の1に
0.5m (50cm)4%50cmですでに25分の1
1m (100cm)1%1m離れると、わずか100分の1
2m0.25%400分の1
3m0.11%900分の1
4m0.0625%1,600分の1
5m0.04%2,500分の1
10m0.01%10,000分の1


このように、ほんの数メートル離れるだけで、収穫できるエネルギーは「桁違い」に小さくなってしまいます。

【参考1】実は身近な「鉱石ラジオ」の原理

「電波から電気を取り出す」と聞くと、なんだかSFのような未来の技術に思えるかもしれません。
しかし、実はその基本原理は、古くからある「鉱石ラジオ」と同じです。

鉱石ラジオは、電池を一切使わずにイヤホンでラジオ放送を聞くことができます。
これは、アンテナで受信した放送電波のエネルギーそのものを使って、音(振動)を作り出しているからです。

現代の電波発電は、この「鉱石ラジオ」の仕組みを極限まで効率化し、音を鳴らす代わりに「センサーや無線チップを動かす」ものだと考えると、イメージしやすいと思います。

【参考2】ワイヤレス電力伝送(WPT)との違い

電波で電力を送る技術として、「WPT(Wireless Power Transfer:ワイヤレス電力伝送)」があります。
「電波発電」と仕組みは似ていますが、環境発電とはその「目的」が異なります。

電波エネルギーハーベスト(環境発電)
  • 放送波など、空間に漂う「すでにある電波」を勝手に拾って活用する技術。
  • いわば、降り注ぐ雨水をバケツで集めるようなものです。
WPT(ワイヤレス電力伝送)
  • 特定のデバイスを動かすために、専用の送信機から「意図的に電波を狙って送る」技術。
  • こちらは、ホースでバケツを狙って水を撒くようなものです。

WPTでは、専用の送信機からわざわざ電波エネルギーを送り続ける必要があります
環境発電の文脈でWPTが説明されることがありますが、「身の回りにある微小なエネルギーを収集する」という環境発電の定義とは異なるものだと私は思います。

まとめ

電波発電は、「空間から電気をひねり出す」ような夢のある技術です。

得られる電力が小さく日常生活で利用するにはまだ多くの課題がある技術ではありますが、無線通信のプロである私たちにとっては非常にワクワクする分野です。

「データ通信している電波で、そのままセンサーも動かせたら……」そんなメンテナンスフリーなIoTデバイスが、当たり前になれば面白いですね。

次回も、環境発電・エネルギーハーベスト技術のポイントを紹介していきます。

 

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